『君たちはどう生きるか』

　素晴らしい本だった。30年前に読んだつもりでいて、実はたぶん読んでいなかった。僕の場合しばしば読んだ内容をほとんど記憶していないことがある。推理小説など、犯人を覚えていないから何度でも楽しめる。
　今回再読してみて、すごい本だと思った。多分前回は最後まで読了していない。読んでいたら記憶に残るはずだ。「100冊の本」に入れよう！

　この80年前の本が今大ブームになっているという。僕にはしばらく教職経験がある。茨城県の「茗渓学園」だ。中高一貫の高等部で教科は国語だった。教科の教材として使った記憶はないのだが、確かこの本は茗渓学園中等部の必修必読図書だったと記憶している。
　中等部から上がってきた4年生（高等部1年）を受け持って、生徒たちは読んでいるのに僕は読んでいない……というわけにはいくまい。と。手元に置いたと記憶している。だから読んだと思っていたが、今回読んでみて、読んでいなかった（に等しい）。こんな素晴らしい本を、ちゃんと読んでいたら覚えているはずだ、と。
　そんな意味で、今回ブームになってくれて、読むきっかけになったわけで、いい本に出合わせてもらってありがとう！というわけだ。膨大な書物群の中から、これはという一冊に巡り合えることは僥倖だ。

　単なるベストセラーぐらいでは、なかなかその気にならないわけで、プラスアルファの要素があると手に取ることになる。今回はラッキーだった。

　数年前に蔵書を大量に処分した。その際に、読もうと思って買った本で手つかずのまま興味が薄れたもの、読んだけど折に触れて読み返すことはないかなという本でいつでも入手可能な（図書館などで借りれる）もの。など。
　だから、この本は持っていたような気もするけど、処分したかなあ？と本棚を探してみたら。そこに鎮座していた。

　ひょんなことから、Facebookを見たという、当時の生徒（4年生）が懐かしくも友達申請をしてくれた。当時のことがよみがえって、後押ししてくれた。

　たまたま家人が不在で、一人外食する羽目になった。（自炊してもよいのだけど……）。で、久々にケルン（喫茶店らしい喫茶店）でコーヒーセットを頂いた。喫茶店でコーヒーを飲みながら文庫本を開くというスタイルが、実はたまらなく好きなわけで、最近そんな時間も取れないでいたのだが、実現した。
　知り合いばかりの島原で、このスタイルはなかなか難しい。議員なんぞしていると、しばしば出会った市民に市民相談を持ちかけられることが多いからだ。今回は邪魔もされずに助走が実現。一気に引き込まれて、（もちろんあとは自宅で）読み終えることが出来た。

※追記2023/7/24

宮崎駿監督作品として、この夏急に同名タイトルの映画。

ひょっとして、これが原作なのかな？と。
映画を見て、比べようにも、既にもう読んだ内容を記憶していない？？？

ちなみに、茗渓学園の必読図書は「君たちの天分を活かそう（松田道雄）」だったようだ。でも、手持ちのこの文庫本は1983年5月の購入で、茗渓学園で教諭をやっていたころの購入。