議会の常識が問われている。

　「懲罰権の乱用」がこれまでも言われてきました。本来、言論の府である議会が正常に機能するために、地方自治法に基づく議会規則などがあり、その中に「懲罰」の規定が盛り込まれています。賛否の別れる議論で、激論になり、言葉が荒くなり、つかみ合いに～～そんなことにならないように、と。

　ところが現実には、多数派が少数派議員を数の力で懲罰にかけ、言論を封殺するケースがほとんどです。大切な意見を中断させられ、発言を撤回させられ、出席停止になれば、議決権も行使できません。そして除名処分。まさに多数派の横暴です。

　昨日12/６、草津の女性議員が住民リコール投票で失職させられました。住民リコールは法で定められた正当な手続きなので有効なのですが、その経過を見ると疑問だらけです。

　女性議員（新井祥子氏）が2015年１月市長からセクハラを受けた（市長室で性交された）と2019年11月発信したことが発端です。真偽のほどは別として、

　懲罰規定の対象は、議場で起きた言動に限るわけで、議場外での出来事は、法的拘束力のない「辞職勧告決議」までなのに、真偽の確認もしないまま、一方的に無実の市長をおとしめる議会の品位を欠く行為として、懲罰にかけられ、即刻12月除名されたのでした。本人以外の11人中10人が除名に賛成したわけです。

　この処分は、議場外のことが理由なので違法処分として（裁判以前のこととして）無効。女性議員は復職を果たしましたが、その決定を不服とした議員たちは合法手段として、リコールを主導し、とうとう彼女を失職に追い込んだのでした。

　議会における懲罰は問題が多すぎて、（先ほども述べたように）多数派が自分たちと対立する意見を封じるためになされることが多く、いわれなき理由で失職しては、本人もひどいですが、選んだ有権者はたまったものではありません。

　だから、さすがに除名処分の場合だけは、裁判沙汰になることがしばしばあって、先般も除名になった札幌市議が無効を申し立てて勝訴したばかりです。（上告されて未だ決着していません）

　地方議会の暴走（理不尽）はとどまることを知らず、多数派のやりたい放題状態。裁判所も、全てを相手にしていてはキリがないので（でたらめを承知で）、除名については、訴えを認めて審議しますが、2番めの重刑「出席停止」については、「良識の府である議会の判断を尊重する。」として、（本心は、痴話げんかは勝手にやってくれ、と）訴えを棄却するのが判例となってしまっていたわけです。

　事実、裁判は長引きますので、すぐ改選時期が来るわけで、多くの場合孤立無援の少数派議員は泣き寝入りしてきたわけです。

　それにしても、近年の地方議会の腐敗は目に余るものがあります。政務活動費の不正とかもひどいですが、まっとうな議論を拒絶して、多数派が力ずくで議会を支配するという、まさに「言論の自殺」状態です。

　さすがに、裁判所として見過ごすわけにいかない。と、この度宮城県岩沼市議の出席停止処分について、議会の暴走を許さない判決を下したわけです。新聞社説では、議会議員もまた（少数の側にいて）人権を奪われることがあるわけだから、（議会は問題を起こさない良識の府などと、決めつけないで）例外なく司法の網を広げるようにと問題提起していますが……。

　簡単には変わらない地方議会があります。このたびの草津町女性議員の失職問題は多くの問題を象徴しています。決して、草津町議会だけの問題ではなく、全国に通じる共通点があります。

　情報収集をしていて、いくらか救われることもあります。この象徴的な異常事態にきちんと向き合って、問題を指摘し、正そうとしている人も存在するという事です。（女性）差別問題に取り組む人たち。

　何よりも、付和雷同することなく、良識を持って信念を貫く議員が草津町議会にも１名ですが存在しているという事です。

　なんと86歳でありながら、Facebookなども駆使して、情報発信をなさっています※。自分を重ね合わせてしまうのですが……ちょっと多忙になったり、無力感にさいなまれては、情報発信が滞る自分。気を取り直して、がんばろーと思います。

※中沢泰治さん