松平文庫の『源氏物語』②

＠肥前島原松平文庫より

目録の説明から選んでそれらしい何点かの現物を見せてもらった。版木彫り『（源氏物語）湖月抄』を開くと、

（ピンクライン筆者加工）「此物語の作者紫式部ハ（中略）藤原為時の女」とあって、系図が付いている。

　　※「女」は「むすめ」と読むのだろうと思う。妻の場合は「室」だと思う。

『明星抄系図』と書いてあるから、『湖月抄』（1673）に先立つ『明星抄』（1534）という研究書から引用してあるのだろう。ページがまたがっているので、半ページずらしてパチリ。（ピンク枠筆者加工、そして拡大）

　「上東門院女房号紫式部源氏物語作者」との説明。「上東門院」とは中宮彰子のこと。

　「御堂関白妾云云右衛門佐宣孝室」とも。御堂関白は言わずと知れた藤原道長の事。妾は「めかけ」でいいのだろう。文学史や日本史の教科書では教えてなかったような気がするが、NHK大河ドラマの道長と紫式部は深い関係になっている。むしろ史実に近いという事だ。　

　我々は、ネット情報（例えばウィキペディア）をついつい受け入れてしまうが、一連の源氏物語研究書関係の説明は、どうやら講談社学術文庫で『源氏物語湖月抄』復刻本を出版した際の秋山虔氏（源氏研究者）の解説が下敷きのようだと思われる。たまたま、アマゾン本屋で発見。前稿で説明したように『湖月抄』はこの時代の源氏研究集大成とのこと。その説明に出てくる全ての原典を網羅しているうえにそれ以外の多くの研究が『肥前島原松平文庫』に集められているというわけだ。うーむ。

秋山氏解説：　Amazon.co.jp: 源氏物語 湖月抄(上) (講談社学術文庫) : 北村 季吟: 本