君の想いは僕の想い②彼女を神殿に入れてはいけない

　小学校時代のクラスメイトMさんは、聡明でライバルのような位置づけ？で、たぶん親しくしていた（年賀状をやり取りするような）のだが、あまり記憶がない。小学校時代の自分は、全くの子どもで、思春期以降の自分からは想像もつかないくらいだ。

　中学生になって（別の小学校出身の）T君と親しくなった。今も親友である。確かT君とは同じクラスにはなっていないから、どこに接点があったのかわからない。T君は詩人だった。

　彼の詩の一節に「彼女を神殿に入れてはいけない」という言葉があった。彼女のことが、好きで好きで、どんどん彼女が崇高な理想になって、遠ざかっていく。遠ざかりながら大きな存在になって自分の心を占めるようになった。彼女は女神ではなく、普通の女性なのに、彼女のことを思うと気も狂わんばかりの毎日、これでは何も手につかない。熱烈な恋歌だったと記憶している。

　そのモデルはMさんであることから、気が付くと僕はT君を通して、彼女を見るようになったのかもしれない。T君とMさんは同じクラスだった時期もあるのかもしれないが、僕はMさんとも中学時代は同じクラスにはなっていないと思う。お互い成績はいいほうで、その席次を巡って、ライバル関係？となって頻繁に意識される存在だったが、どこかに「神格化」されたMさんがいた。

　大人になって、Mさんは、中学時代の担任である恩師（したがって、僕とは別のクラスの担任）と飲んでいて、どういう思い立ちか「今○○先生と飲んでいるのだけど出てこない？」だったか、○○先生から「今Mと飲んでいるけど、出てこないか？」だったか。夜のカウンターバーで何十年ぶりかに会って飲む機会があった。突然、小学校時代の他愛ない幼馴染ガールフレンド（または思春期に意識していたガールフレンド）に距離が縮まった記憶がある。記憶があいまいである。

　先般の高校同窓会でMさんと再会。「あの時３人で飲んだ○○先生も、もう鬼籍に入られたね。」と。T君もまた、高校まで同じだったわけではあるが、同窓会には来ていなかった。T君にとって女神のような存在だった？Mさんに、T君の事覚えているかい？と続きを話しかけたかったが、そこまでは時間が取れなかった。